LGBTの主人公が自らのアイデンティティに悩みながら敵を殲滅しまくる『ハイヒールの男』

2020年8月14日

映画酒場度数 ★★★★

犯罪組織からも恐れられる脅威の戦闘能力と暴力性、そして完璧な肉体と容姿を兼ね備えた刑事ユン・ジウク。しかしそんな彼にも人に言えない秘密が一つだけあった。

それは<女性になりたい>という願望を持っていること。

長年そのことで葛藤を続けてきたジウクだったが、ある出来事をきっかけにして遂に自分の心の声に従う決意をする。

だがその時、容赦無い暴力と悪意がその運命をあざ笑うかのようにジウクの身に迫っていた・・・。

このジャンルは韓国映画の得意分野!日本映画では手も足も出ない印象

この物語はLGBTの苦悩を巧く絡めて話が進みます。脚本も良いのですが主人公『ユン・ジウク』役を演じた『チャ・スンウォン』が特に素晴らしい。

この俳優さん、『アイリス』ってドラマにも出ていてその時から好きでした。日本でも一時期ゴールデンタイムで放送されていましたね。

悪役なのですが、その時の髭がカッコ良かったのです。この『ハイヒールの男』では、自分の性別に苦悩する最強の警官という非常に難しい役所を見事に演じきっています。

特に印象的だったのはクライマックスのシーン。主人公が女性として生きていく覚悟を決めた矢先に、警察官時代の可愛がっていた後輩が敵に殺されてしまうシーン。

後輩の復讐を誓い元の姿に戻るため、タクシーの後部座席でイヤリングを外すシーンがあります。ここは胸が締め付けられる様な名シーンです。タクシードライバーの役者も良い。

そこからの主人公の暴れっぷり振りの対比も素晴らしい。まさに戦国無双!

ここまでの感傷的なシーンがクライマックスの殺陣をより引き立てます。殺陣も韓国映画特有の『痛い』が伝わるものになっています。

韓国映画って手斧とかナイフとか出てくるけど拳銃なんかより恐ろしく感じます。

この映画の最後のシーン‥これはハッピーエンドなのか‥バットエンドなのか‥観る人によって解釈は違うと思いますが素晴らしい映画です。

邦画でこれをリメイクしても‥無名の舞台役者とかで撮ったら面白いかもしれません。

韓国の俳優の凄いところは『そんな役やるのっ!』て役を一線級の俳優さんがやるところ。例えばイ・ビョンホンの復讐の鬼と化した韓国映画『悪魔を見た』とか。

ハリウッド映画にも出るくらいの俳優なのに内容も含めて『よく出演を決めたな‥』って作品。

この『ハイヒールの男』もそう。『別にやらなくても良いじゃん!』て思うけどあえて出演する感じ。その懐の深さが韓国映画界には感じられる。